MISONO's NEWS

校長の声

校長の声『Rainbows』

 「何故、目に見えないものを信じようとするのですか?」

 これは高3の生徒が宗教の時間で取り上げて欲しい質問である。一つの答えは「星の王子様」に登場するキツネの言葉であろう。「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばん大切なことは、目に見えない。」もう一つの対応は昔あるマンガで見つけた名言である:"If you don't know the answer ... question the question"「答えが分からなければ質問にケチをつけてみるがよい。」しかし、上のような質問を議論せず簡単に片付けようとするのはあまりよくない。丁寧に取り組む必要がある。

 一つのヒントは画家ピカソが芸術の役割について残した言葉である。"We all know that Art is not truth. Art is a lie that makes us realize truth"「芸術が真実でない事は誰もが知っている。芸術とは真実を悟らせてくれる嘘である。」ところで、このような重要な役割を担っているのは芸術だけではない。日常の自然現象にも真実を悟らせる機能がある。一つの具体例は雨の後に果てしなく空を渡る虹である。

 観察すれば世界中のどこでも全く同じように見える自然現象である虹には、何故色々な(科学的な裏付けのない)話が纏わっているのであろうか。日本にはイザナギとイザナミが虹を渡って下界に来たという神話がある。(下界に降りた道は天橋立だったという説もあるが、)アイルランドの古い伝説は、虹の麓には黄金の壺があると約束している。そして旧約聖書創世記9章17節によると、虹は神と人間との間に結ばれた平和の契約のシンボルである。「神はノアに言われた。『これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間に立てた契約のしるしである。』」

 科学に頼れば、光という自然現象の効果として完璧に解明できる虹であるが、空の虹を見上げる時、事実と関係ないストーリーが私達に見えてくるのは何故であろうか。このようなストーリーは元々私達の心にあって、私達はその(偏見と思われるような)観点から物事を見ている。これは心理学の説明である。しかし、ストーリーはどのようにして私達の心に入ってきたのだろうという問いは、最初に引用した生徒の質問と同様、心理学が取り扱える領域を超えている。

 人類のはじめから、人間は何故目に見えないものを信じようとしてきたのか。詩編36編10節に書いてある言葉は参考になるのではないか。「命の泉はあなたにあり/あなたの光に、わたしたちは(虹の)光を見る」。

K601.jpg1枚目:オーストラリア(Fremantle)で見た虹

K602.jpg2枚目:ドイツの実家から見た虹

K603.jpg3枚目:みその台から見た虹

K604.jpg4枚目:京都府宮津市の天橋立

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