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校長の声

校長の声『Puzzle』

 34年前、ヨーロッパ研修旅行の引率の時、イタリアのミラノでレオナルド・ダ・ヴィンチの名作「最後の晩餐」を観賞する機会があった。保存状態が悪く、原作の姿を保っているのはほかの画家が描いたコピーだという説明を受けたが、それにしてもイエスとその弟子達とのやりとりをリアルに伝えている様子は印象深かった。

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 聖園の手芸部の生徒が取り組んだプロジェクトの中にはダ・ヴィンチのこの名作をクロス・スティッチの刺繍で再現する作品がある。10年をかけて出来上がった完成品は講堂の後ろに飾ってある。原作に近いコピーが目的であれば、写真を撮った方が早いが、長い時間をかけて作り上げた刺繍は、元の作品の魅力を別の形で伝えていることは確かである。何故かというと、近くから見ればクロス・スティッチのバラバラの針目しか見えないが、距離をとって眺めれば全体像が浮かび上がってくるのである。

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 神言会の黙想の家には同じ「最後の晩餐」の複写が飾ってあるが、これは原作の写真を元にしたジグソーパズルである。クロス・スティッチと同様、近くから見れば各紙片がくっきりと見えてくるが、一歩下がって観察すれば、このような細かいところは1つの絵にまとまってくるのである。

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 ミラノで見た現物は印象深かったが、刺繍やジグソーパズルの作品を見て色々と考えさせられた。

 人生とは、ジグソーパズルのように、既製品から組み合わせる作業であろうか。或いは糸と針を使って1つのイメージを再現する作業であろうか。それとも(ダ・ヴィンチのように)一人で創り上げるオリジナルの芸術作品の創作であろうか。

 意見の分かれる事柄ではあるが、1つだけは言えると私は思う。人生は正解があるパズル・謎である。創り上げるには必要な材料と道具、組み立てに必要な小片、そして他の人と違うイメージを生み出すための想像力は神が提供してくださる。いずれにしても、全体像を見るには長い時間を使って細かい作業に取り組まなければならないという覚悟は必要であろう。

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