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校長の声

校長の声『刺のない薔薇』

K39-1.png みその台の広いキャンパスで咲いているのは久しぶりに登校してくる元気な聖園生だけではない。今年1月17日付の『校長の声』で紹介した庭"Kleines Glück"は何種類もの綺麗なバラがちょうど満開である。見たり写真を撮ったりしている時にふっとドイツのある歌が頭に浮かんできた、ゲーテの詩で有名な「野バラ」。「バラ」と言えば、「トゲ」もつきものである。

 4世紀頃活躍していた有名な教会博士、聖アンブロジウスの話によれば、バラは元々トゲがなかった。アダムとエヴァが神の命令に背いてエデンの園から追放された時、バラにトゲがつくようになり、人間の目を楽しませてくれた美しい花は、人間の罪のために人を刺すようになった。なんとなく納得がいく話であるが、この「触るな」と脅かしている美しいバラは早い段階からイエスの母となった聖母マリアの一つの象徴として使われてきた。しかし、このバラは手に傷をつける悪者ではなく、トゲのない"Rosa Mystica"、「奇しき薔薇」として(罪のない)聖母マリアを表すシンボルである。

 コロナウイルス対策で今年は出来なかったが、生徒は毎年5月(そして10月)朝礼の時に「ロザリオの祈り」を唱える。トゲがない慈しみで人類を見守ってくださる聖母マリアを記念する祈りである。普段、学校説明会の時にロザリオ作りが体験できるコーナーがあるが、感染防止のために、オンライン教育の一環として当面インターネットでロザリオ作りの動画を提供しているのである。*1

K39-2.png 自然界(そして人間)には美しさと共に必ず痛ましさがあるが、トゲのない美しさは私達人間にとっていつまでも消えない夢である。両方の象徴はバラの花である。事実だけで満足しないで、意味を求める人間にとって矛盾だらけの現実を受け入れるためにバラのようなシンボルは必要かもしれない。

 先行きが分からなくなった時には、可愛い子羊のように、聖母マリアの足にすがりつきたくなるのは人間かな。

 

 

*1 Youtube「聖園女学院 ロザリオの作り方」: https://youtu.be/JJmDX0Db84A

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