幻の春期講習
いつもの春休みを迎えることができていたら......
聖園女学院 宗教科主催の、こんな春期講習が開講されるはずでした。
「種まきでイースターをお祝いしよう」
イースターとは、十字架にかけられて亡くなったキリストが、その3日目に復活したことを祝う「復活祭」のこと。校舎の片隅にラディッシュの種をまいて、サンドイッチをおいしくいただく。これがどうしてイースターのお祝いになるのでしょうか?
宗教科の先生方が、こんなことを教えてくれました。「ラディッシュの種は小さいけれど、私たちが土を耕して植えたら、その後は特別になにかをするわけでもないのに実をつけます。理屈ではない〈いのち〉の不思議さを感じるのに、春はぴったりの季節なんです」
「小さな種が育つには、人の手による肥料や水やりがもちろん必要です。けれど、それだけで育つわけではありません。目に見えるもの以外の力も加わっています。それを、宗教科では〈神〉と呼んでいます」
「すべての植物は小さな芽からはじまって、大きくなって、散っていきます。そこで終わらず、散った後には他の植物たちの肥料になって、新たな〈いのち〉がはじまるのです。これはまさに、キリストの復活と重なります」
多くの生徒にとって、「キリストの復活」は自分から遠いもののように感じられることでしょう。自分たちが毎日通う聖園女学院という学校で育った植物が、食材として自分の中に入りこみ、自分をつくる一部になる。やがていのちが繋がっていく。身近で壮大な〈いのち〉の物語を感じてほしい!という熱い想い、この記事をご覧のみなさまにも伝わるでしょうか。
生徒も楽しみにしていた春期講習、今回は幻に終わってしまい、ラディッシュ入りのサンドイッチは無事に(?)先生方の胃袋へと吸い込まれていきました。
キリストの復活と同じようにと言ったら大げさすぎるかもしれませんが、季節はまた巡ってきます。それまでにたっぷりと、自分自身の心と体を耕しておきたいものです。