第38回 中学生水の作文コンクール受賞者について
第38回 中学生水の作文コンクールにおいて、我が校の生徒が受賞いたしましたのでここにご案内いたします。
経済産業大臣賞( 優秀賞)
大切な水のためにできること
神奈川県 聖園女学院中学校 一年 関 日陽
「わーっ、きれいな水ですね。」シュエちゃんは、感動した様に目をキラキラさせて言った。「私の国ミャンマーは、水道から出る水も茶色くにごっていたりするの。だから、水道水を飲むなんて、絶対出来ないのよ。」シュエちゃんは、ミャンマーから来た留学生だ。私の家にホームステイをしている時、蛇口をひねればきれいな水が出ることに驚いたようだった。さらに、二人で食後の皿洗いをしている時のこと、水を流しっぱなしで洗う私に、シュエちゃんはこう言った。「水は大切よ。おけに水をためてここである程度洗ってから流さないと、水の無駄使いよ。」私は、その言葉に衝撃を受けた。水が大切だということが頭でわかっていても、普段意識したことなど一度もなかったからだ。当り前の様に、きれいな水を飲んだり、使ったり出来るのは、発達した日本の浄水、下水道システムのおかげであり、それは世界から見れば、贅沢でありがたいことなのだと、はじめて知ったのだ。
私の祖父は、終末処理場で働いていた。終末処理場とは、生活で使った水や雨水などをきれいに浄化し、川にもどしている施設だ。祖父に、日本の下水処理についてたずねてみた。祖父は、研修の一環で、海外の下水処理施設を視察に行った経験もあるが、やはり日本の施設は、世界の中でも非常に優れているのだそうだ。しかし、悩みもある。それは、終末処理場に集まる汚水の中に、油や食べ残しなどのゴミが多く混入していることだそうだ。その処理のために、多くのコストがかかるらしい。もう一つ、リン系の洗剤が流されること。リンは、水の汚れをきれいにしてくれるバクテリアが食べてくれないのだ。どちらも、下水を利用する私達一人一人が意識を持てば、改善できることだ。流す水にゴミが混入しないようにすること、無リン系の洗剤を使用すること。私は水を大切にする一歩として、さっそくこの二つを実行してみようと心に決めた。祖父の話には、もう一つ興味深いテーマがあった。それは、終末処理場に集められる汚泥から発生するメタンガスを使って電力を生み出す研究が進み、少しずつ実用化されてきているということである。廃棄物が再利用され、それがエネルギーとなり、また利用されれば、よい循環を生む。「もし汚泥から、膨大なエネルギーが生み出せたら、世の中が変わるだろうね。」という祖父の話を聞きながら、もし叶うなら私もその研究にたずさわる仕事がしてみたいと思った。とても夢のある研究だからだ。
今年四月、熊本地震が起き、浄水場、下水処理場共に被災して使用不可となり、生活用水の供給、下水道の復旧が今現在も完了していないという。お風呂に入る、衣服を洗うといった生活に密着した水の不足は、避難所でくらす被災者の方々をどれほど苦しめているだろう。トイレを流すことが出来ず、衛生的に過ごすことが出来ないことが、どんなにストレスになるだろう、と想像するだけで、心がぎゅーっと苦しくなる。一日も早い復興を祈らずにはいられない。
世界には、そしてこの日本にも、ほんのわずかな水を求めて苦しんでいる人がいる。シュエちゃんの様に、水道をひねっても汚れた水しか出てこない、不自由な生活をしている人も大勢いるのだ。その人々のことを決して忘れてはいけない。発達した浄水、下水道システムを使っていけることに感謝し、そのエネルギーを無駄にしないこと。そしてなにより、今の私に出来ること、使える水を大切にすること、流す水にも気を配って生活することを心がけたいと強く思う。それが例え小さな力でも、皆が取り組めばいつかは、世界中の人々が豊かな水を享受出来る日が来ることを信じて...。