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校長の声

校長の声『十字架称賛』

 カトリック教会の典礼歴には沢山の祝い日はあるが、9月で目立つのは29日の大天使ミカエルの記念日、そして14日の「十字架称賛」の祝日である。大天使ミカエルのことはまたいつか話すことにして、今回は「十字架称賛」について多少個人的な観想を紹介する。

 このような話題は多少の違和感を与える内容に見えるかもしれない。何故かというと、称賛されているのは間違いなく、ローマ帝国の時代に多くの人を苦しませた死刑の道具だからである。しかし、私にとって称賛されるのは、痛ましい磔(はりつけ)よりも、故郷ドイツのLimburg(リンブルク)の大聖堂の博物館に展示されている珍しいもの、イエスがつけられたと言われている十字架の断片である。小さいときから「これは間違いなく本物だ」と信じた私は、(考古学者の意見を無視して)今でもそれを疑う必要はないと思う。大聖堂とともに、この貴重な遺物は学校で学んだヨーロッパの歴史と自分の古里とを繋ぐリンクとなっているのである。十字軍が破壊した東ローマ帝国の首都から持ち出されたものではあるが、小さいときから親しんできた大聖堂と一緒に誇りに思っているのである。因みに、(ユーロがヨーロッパの通貨になる前に)ドイツマルクの1番大きい千マルクの紙幣を飾ったのはこの大聖堂の絵であった。

 -残酷な死刑、ちょっとだけ疑わしい遺物、キリスト教と戦争、宗教とお金の微妙な絡み-このような複雑な背景を把握していない世代にとって、リンブルク教区が毎年盛大な祝祭行事となっている。この十字架称賛の祝日は、私のような古いものには懐かしい思い出となっている。

 「心を入れ替えて子供のようにならなければ、決して天の国に入ることはできない。」(マタイによる福音、18章3節)と言った人は、矛盾と反省すべき点を厳しく批判しながらも、信頼と愛の大切さを教えてくださった。だからこそ罪のない方が貼り付けられた十字架はこのような信頼と愛の象徴として今でも称賛されるのである。

上空からの写真.jpgのサムネイル画像

1枚目:リンブルク大聖堂 上空からの写真

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2枚目:リンブルク大聖堂 外観

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3枚目:リンブルク大聖堂内の十字架

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4枚目:千マルク紙幣

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