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校長の声

校長の声『記念日』

 法律で定められている16の「国民の祝日」のうちの2つ、2月11日の「建国記念の日」と5月3日の「憲法記念日」は「記念日」となっている。記念されている出来事は神話と史実、かなり対照的な内容となっているが、あのとき何か大事なことが始まったということは共通点である。そのため毎年それなりの行事が開催されているが、殆どの人にとってこのような「祝日」(例えばゴールデンウィークを構成する「憲法記念日」)は単なる「休日」になっているのではないか、という印象をうける。言うまでもなく、これは日本だけで見られる現象ではない。12月頃に見られるクリスマスツリーやサンタクロースと、イエスの誕生を記念する降誕祭とはどういう関係があるかは必ずしもはっきりしているわけではない。

 前置き少し長くなったが、今年注目して欲しい2つの記念日を紹介する。5月30日は(聖園女学院の設立母体である)聖心の布教姉妹会の創立百周年記念日、そして5月8日は75年前、第二次世界大戦でドイツが降伏した日である。(ドイツの首都ベルリンで、今年に限って、5月8日は"Tag der Befreiung"(ナチ政権からの)「解放の日」として特別な祝日となっていた。)

 最初に指摘した「祝日」と「休日」の問題に戻る。今、聖園女学院に通っている生徒にとって100年前の出来事は「関係ない話」に聞こえるかもしれないし、第二次世界大戦終了後に生まれた人にとって、75年前にドイツの敗北で終わった戦争は歴史の授業で学んだ史実だけであって、個人的に「関係ない話」になってしまう可能性はある。しかし、直接的に関係のないと見なされている出来事は、意識されなくても、生活環境に形を与える伝統となっていることを見逃してはいけない。この伝統と自分自身の関係を確認するよう呼びかけているのは毎年の記念日である。

 言うまでもなく、記念されている出来事は必ずしも全て良いものとして受け継ぐ内容ではないが、共通の課題はある。この伝統はどのように自分と繋がっているか、そして自分にどのような言動を求めているかを真剣に考えるという課題である。5月30日と5月8日はそれぞれの違う課題の具体例となっている。

 聖心の布教姉妹会、そして南山学園の創立者であるライネルス師が残した「一人の存在は必ず一つの貴い使命をもっている」は今でも聖園女学院の教育理念を総括する言葉であり、教員と生徒が共に取り組む目標である。ドイツの敗北で明らかになった強制収容所と600万人のユダヤ人の虐殺は、このようは非人間的な行動をもう一度犯さないように、注意と反省を促している。どちらでも「関係ない話」として無視できる内容ではない。

 休日となっているからこそ、記念日はチャンスである。歴史を振り返ることを通して現在を見極め、そして新しい未来を考えるチャンス。というのは、私達は伝統を受け継ぐだけではない。私達はそれと同時に次世代の人々を悩ませる、或いは慰める伝統を造っているのである。良い部分を引き渡すこと、そして世界平和の鐘を鳴らし続けて、悪い部分が絶対に再発させないことは、私達が共有する使命、生まれた時、命と一緒に与えられた使命である。

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① ヨセフ・ライネルス師

② 世界平和の鐘 ベルリン市内のフリードリヒスハイン公園

③ 虐殺されたヨーロッパのユダヤ人(ホロコースト)のための記念碑(ベルリン、ブランデンブルク門南側)

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