MISONO's NEWS

校長の声

校長の声『書道』

 大学で教えた時、始めて私の授業を履修した学生の声。「先生の板書は読めない!」「重要なことは配ったプリントにあるから、板書を無視してください」と、当時の私の答えであった。(聖園女学院で担当している宗教の授業は最初からプリントを使っているので、板書に関するコメントは今までなかった。)

 自分の下書きを読めなかった経験がある私なので、人からの指摘を素直に受け入れる心構えではあるが、敢えて綺麗な文字を書く練習に取り組もうと思ったことはない。英語で"calligraphy"というこの練習をインターネットで検索したら、「書道、習字、書法、能書、カリグラフィー」の後に興味深い定義、「文字を美しく書く行為」があった。(語源であるギリシャ語の直訳である。)綺麗な文字を書く趣味がある人がやることで、私には関係ないという考え方は、日本に来てから少し変わった。私の手書きは相変わらず読みづらいが、美しい文字は必ずしも読みやすい文字ではないことに気づいたからである。そのきっかけとなったのは日本語を学んだ学校で出会った書道であった。

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 その時に分かったことは三つあった。美しい文字にするために身体全体を動かして先生が教えてくださった道に沿って行くことは欠かせない。もう一つは、このように書かれた文字は必ず読みやすいものではない。(ゼミの卒業生からもらった年賀状は具体例。)そして、「里仁為美」の言葉順番を間違って、その意味が分からなくても、綺麗な字でそれを書くことは出来る。

 「仁に里るを美と為す」(じんにおるをびとなす)、一人ひとりの特性を伸ばすことは人間らしい、美しい生き方に繋がる。例えば、文字の下手な書き方のために読みづらいところがあっても。

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