校長の声『聖園坂』

「聖園女学院の中で先生が一番好きな場所はどこですか。」という聖園生の質問に対して、私の最初の答えは今まで一つだけであった。「人が一緒にいれば、どこでも一番いい場所になる。」と。しかし、最近はその次に一つの具体的な場所を付け加えることにした。これは木の下で女学院に辿る聖園坂である。聖園坂のトンネルから出れば、明るいキャンパスが訪れている人を迎えてくださる。

　ところで、先日久しぶりに藤沢本町から登った時に気になるものがあった、「最徐行」という標識。

　歩行者を守るためにスピードを落とすことは交通安全の常識ではあるが、歩いて登って行く歩行者が直面する状況から見れば、かなり現実的な言葉ではないか、と私は思った。聖園坂は走って登る道ではないので、「最徐歩」と薦める標識もあった方がいいかもしれない。

　ラテン語の"festina lente"やドイツ語の"Eile mit Weile"は日本語で「急がば回れ」という諺となっている。聖園坂であれば回り道は要らない。　ー　ゆっくりと考える時間を提供してくださることこそ聖園坂に秘められた恵みである。

　言うまでもなく、実際に登ってみなければ、このいい側面に気づかない　ー　「急がば聖園坂」。