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校長の声

校長の声『「絵」か「言葉」か』

 インパクトがある広告をデザインするときには"a picture is worth a thousand words"、「1枚の絵は1,000の言葉に値する」という諺は参考になる。ポスターやテレビのコマーシャルで人の目を引くのは言葉と文字ではなく、親しみを感じさせるイメージである。例えば、聖園女学院の宣伝となるのは文字に溢れている雑誌よりも、礼儀正しい聖園生の姿である。

 人間が発する言葉に通じる諺であるが、神が発する言葉になると全く違う話になる。

 私達が生きている宇宙はどのように始まったのか。自然科学と聖書はそれぞれ違うイメージで説明してくれる。自然科学で目立つイメージ、いわゆる「ビッグバン」に対して、聖書は「神の言葉」を取り上げている。「神は言われた。」(創世記1章3節)と「初めに言(ことば)があった。」(ヨハネによる福音書1章1節)換言すれば、宇宙の初めには神の一言があった。

 ビッグバンは元々神が大きな声で叫んだ言葉ではないか、という解釈を別にして、神の一言から数え切れない自然界の美しい絵は生まれたということは聖書の教えである。その絵の一つを話そうと思っても、人間の言葉では語りきれない。しかも、見ている人によって、一つの絵から全く違う、互いに矛盾するイメージも生まれてくるのである。

 具体例は何年か前にプエルトリコ教皇庁立大学カトリック大学(Pontifical Catholic University of Puerto Rico)で見たポスターである。

VOX#74_Ponce.jpg

 幼稚園の園児でも新聞を読めるようになる、優れた教育を実施している教育学部(colegio de educación)をアピールする広告であるが、この写真から何を読み取れるのであろうか。男の子は新聞を読んでいるふりをして、本当にまだ字を読めない。或いは字は読めるが、新聞に軽く目を通すぐらいで、隣に置いてある、大事な伝統を語る本を無視している。

 ちなみに、このポスターには教育学部の理念も書かれてある。「教師の教師であるキリストに導かれ、私たちは誇りと献身と尊厳を持って人々に奉仕します。」

 広告なので、現実から多少離れたイメージになるのは決して悪いことではないが、やはり注意すべき点は3つある。「1,000の言葉に値する」絵を言葉に代えるときに、人によって見方は違っている可能性を意識しなければならない。もう一つは「百聞は一見に如かず」の弱点である。見るだけで満足して、重要なメッセージを伝える言葉に耳を傾けないのは失敗の元である。そして、最後に、人間同士で無意識に通じる諺の常識を覆すのは、教師の教師であるキリストの言葉である。

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