校長の声 『Advent』
校長の声 『Advent』
いきなり言葉の勉強!
世界中のキリスト教の教会は毎年12月25日にクリスマスを祝っているが、カトリック教会の正式な名称、"IN NATIVITATE DOMINI"は日本語で「主の降誕」となっている。その前の準備期間の"TEMPUS ADVENTUS"は日本語で「待降節」となっているが、大分前からこの名称に対して疑問を持っていた。「主の降誕」は原文のラテン語の直訳であるが、待降節の翻訳で目立つのは「待」という言葉である。お偉い方の「降」を待つ期間はドイツ語と英語でAdventという名称となっている。「到着」という意味である、即ち待っても待たなくても、お偉い方の予測できない到着。
言葉の勉強をこのくらいにしておいて、待降節の聖歌のドイツ語版を紹介する。「待降節」、"Advent"と言えば、私の頭で浮かんでくるのはカトリック聖歌集102番、「やみ路になやめる エワの子われらは すくいのみ光 したいてさまよう」のメロディーである。しかし、ドイツ語の原文は大分違う方向に目を向かわせる。
「おお救い主よ、天を引き裂いてください。下へ、下へ、天国から走ります。天からの門や扉を打ち壊し、錠や閂(かんぬき)のあるところを打ち壊してください。」
この歌詞の歴史的背景にはヨーロッパの30年戦争がある。自分の力ではもう何もできない状況の中で神に助けを求める聖歌である。言うまでもなく、似たような想いは今生きている私達にもあり得る。「やみ路になやめる」私達であるからこそ、私達の先進を妨げる、閉まっている門等を打ち壊すように神に祈るのである。
微笑む幼子イエスを歓迎する準備期間、門を開けてもらうことを静かに待つ待降節でもあるが、「もう待てない!」と叫びたくなるAdventになる可能性も十分にある。